保育ママによる虐待事件で区も賠償責任を負担

概要生後5か月女児、保育ママによる虐待により負傷。区も規制権限不行使の違法とされ賠償責任を負担。
自治体東京都世田谷区
発生時期2005年
詳細生後五か月の女児の保育を世田谷区の家庭福祉員(保育ママ)に委託したところ、泣き止まない女児に対し、ベビーカーにのせ
たままその頭部を動揺させる激しい暴行を加えた。
硬膜下血腫、眼底出血により全治三か月を要した。

保護者が、暴行を行った保育ママ・保育ママの運営主体である世田谷区・世田谷区に都費援助等を行っていた東京都 に対して損害賠償を請求。

暴行を行った保育ママについては、この事件の前にも虐待の可能性も含まれる趣旨の苦情を区は受けていた。
このことから、
“保育中に乳児の傷害事件が発生し、その責任がこの保育ママにある疑いがるとの苦情、虐待であるとの明示の苦情ではないものの、つきつめれば、その内容としては、虐待の可能性も含まれる趣旨の苦情を受けていたこと、そして、区の保育課担当職員は、この保育ママが当該乳児に対する事故を報告する義務があるにもかかわらず、これを怠っており、しかも、平成15年10月20日にこの保育ママに対する巡回指導が行われているにもかかわらず、その際にも、この保育ママから何らの報告もなかったことを了知していたものと認めることができる。”
とされ、
“世田谷区の区長あるいは区の保育課担当職員は、この保育ママの保育業務に対する調査を怠り、この保育ママの乳幼児に対する虐待が続発するのを放置するとともに、少なくとも区要綱17条及び14条の権限を行使しなかった点において過失があるもので、法令の趣旨・目的や権限の性質に照らして、その権限の不行使が著しく合理性を欠くものであるから国家賠償法上違法である。この保育ママと連帯して、賠償責任を負担すべきである。”
と言う内容の裁判結果となった。

保育事故で、権限不行使により自治体が賠償責任を負担した事例である。

(東京都に対しては、保育ママ制度は世田谷区の固有の事務(自治事務)であり指揮監督関係が発生するものと認めることは困難であるとされ、指導の懈怠を理由とする国家賠償責任に係る請求は理由がないとされた。)
改善策例自治体による、適切な権限の行使

参照:東京地判H19.11.27判タ1277-124

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